前記事: LASIK: 術後編: PC ディスプレイと TV は何日間禁止? 何分間ならOK?

錦糸眼科でイントラレーシック後に配布されたケア用品で、個人的に物議を醸したもの。それは老眼鏡 (遠視用メガネ) です。品川近視クリニック、神奈川クリニックでは配布されません。本当に効くのでしょうか。

「近視の戻り」とは

「近視の戻り」は、どうも厳密に定義された医学用語ではなさそうで、色々言われていることを総合すると 3つの原因がありそうです。

1つめは、レーシック後避けられないもので、閉じたフラップが角膜に張り付いて安定するまでに、角膜の曲率が小さくなって屈折度数が近視寄りになるというもの。

2つめは、基本的に削られたら修復しないはずの角膜実質層が、ケガを治そうとするのと同様に元の厚みにもどろうと若干修復してしまう現象。

そして 3つめが、今日取り上げる環境適応による戻りです。

近視には仮性近視真性近視があります。子供の目の話でよく聞くのが仮性近視ですが、これは水晶体という目の中のレンズを厚くしたり薄くしたりする毛様体という筋肉が、近くを見続けた場合に緊張しっぱなしになることで起こります。

これに対してレーシックを受けようとする人は真性近視 (軸性近視) で、眼球全体が前後にラグビーボールのように数 mm 伸びることで焦点距離を変化させてしまい、近くを見続けるのに適応した目、逆に言うと遠くが見づらい目になってしまいます。

しかし、レーシックは軸性近視を根本的に治療するのではなく、角膜を削って光学的に度数のつじつまを合わせている、その結果 +0.0D になっているに過ぎません。伸びた眼球を縮める方法があればレーシックに取って代わる画期的な技術になるでしょうが、そうではないのです。眼窩 (眼球が入るくぼみ) に余裕がある限り、レーシック後も近くを見続ければ、眼球は前後へまだまだ伸びていきます。これが近視の戻りです。

そんなわけで、同眼科のパンフによると「環境適応による近視化を防止するため、長時間近くを見る方は装用してください」となっています。

なお、錦糸眼科、品川近視クリニック、神奈川クリニックのエキシマレーザー装置の比較を以前しましたが、イントラレーシックという術式は上記以外でもどこでも同じで、老眼鏡をくれないクリニックは近視に戻らないのかというと、そんなことはありません。

老眼鏡が近視の戻りを防ぐのに有効な理由

品川レーシッカーズに老眼鏡を処方されたというと、意外な顔をされますが、老眼鏡を使えという理由は、原理的には分からなくもないのです。

レーシックを施した目は一時的に遠視 ((私の場合、右 +1.0D 左 +0.75D が手術直後)) になり、それから一定期間かけて +0.0D 前後に近づいていきます。ところがこの期間に PC ディスプレイや読書など近くを見続けることによって、毛様体の緊張 → 環境適応による再近視化が進んでしまいます。

子供の時に、親の勧めで「視力回復センター」に通ったことがありますが、原理的には似ていました。つまり老眼鏡をかけて実際より遠くを見たことにして、ランドルト環 (輪っか) を一定時間ずつ見続けるというものです。

老眼鏡はどんな条件でかけるか – 距離と作業時間

処方しているメガネには度数に 2種類あるらしく、+1.5D と +2D があるようです。ちなみに私の場合は +1.5D で、手元の新聞記事の見え方を確認したうえで手渡されました。

どんな距離でこれを使うかですが、「2008年近視レーザー手術ガイドブック」や、錦糸眼科に問い合わせた内容を総合すると、

  • +1.5D の場合、70cm 以内
  • +2D の場合、50cm 以内

の近くを 30分-1時間以上続けて見る作業ではこれをかけるように、とのことでした。

期間については、目の視力が完全に安定するのは半年-1年後なので、最低でも半年は続けるように、と。

+2D の眼鏡であれば、50cm 先のターゲットを見ている分には、目は無限遠にあるように感じる (実際は近くにあるのに、遠くにあるように感じる) ので、毛様体の緊張を強いられることはない、というわけです。 

会社と自宅の環境で実践してみました。

続き: LASIK: 術後編: 老眼鏡は「近視の戻り」を防ぐのに効果的か? Part2