NTT ドコモ、ソフトバンクモバイル、イーモバイルといった移動体通信事業者が用いている通信方式は、HSDPA と呼ばれるものです。”通信速度” は各社とも最大 3.6Mbps ~ 7.2Mbps ((機種によって異なる)) となっていて、ADSL の低速メニューに取って代わるところまで来ています。

しかし HSDPA を実際使ってみると、Web ブラウズ用にはそこそこ使えますが、ファイル送信が妙に遅いことに気がつきます。

HSDPA の上り速度は 384Kbps しかない

実はそれもそのはず、HSDPA の上り速度は 384Kps しかありません。そもそも K (キロ) と M (メガ) で単位が異なるのでなんだかピンと来ませんが、下り 7.2Mbps として、実に 19分の 1しかないのが上りなのが現状です。

各通信会社とも、速い下りのスピードだけを大っぴらに説明していて、あまりこのことはクローズアップされずに来ましたが、名前の由来を考えると HSDPA は Hi Speed Downlink Packet Access で、速いのはダウンリンク = 下り方向だけですよ、というわけです。

このような「下りだけ速い」サービスは他にもあります。

ADSL の上り速度も 5Mbps どまりしかない

ADSL 自体がそうです。最大 50Mbps の ADSL サービスであっても、上りは 3~5Mbps しかありません。17分の1 ないし 10分の1 しかないわけです。だいたい ADSL は Asymmetric Digital Subscriber Line で、アシンメトリックつまり非対称デジタル加入者線で、上りを犠牲にするかわり、下りは速いわけです。

上りをケチっている度合いで言えば、HSDPA の方がより極端ということになりますが…。

対称型のサービスよりは非対称サービスが普及してきた

左右対称のことをシンメトリーと言いますが、ADSL の仲間でちゃんと SDSL = Symmetric Digital Subscriber Line というサービスがもともとあります。ただ ADSL の普及に比べ SDSL は今ではほとんど名前を知られていないことからも分かるように、大半のインターネットユーザーは、自分が情報に対して受け身になるサービスを求めてきたわけです。

ところが、インターネットの使われ方にも変化があります。企業によるお仕着せのコンテンツではなく、ユーザーが情報をネットに送信する使い方が活発になってきました。

いわゆる手アカのついた「情報発信」から想像するイメージは、Web コンテンツやブログをアップしたり、YouTube やニコニコ動画など動画共有サイトへ投稿したりといった、「一対、不特定多数」のサービスですが、それだけでなく、携帯電話で撮った写メを送信したり、またネット上の SkyDrive のようなオンラインストレージにデータを置いたりといった、見る相手が限定されている 1:1、1:数人、といった送信も増えてきました。

そこで、HSDPA による通信サービスを提供する各社は、上りを強化した HSUPA に対応し始めています。