Apr. 19 エルサレムの巻 中編

12:30 エルサレム旧市街に入る。車が停車し、私が座っている助手席側の窓がひらいて男が話しかけてくる。単なるドライバーの友人のようであるが、いきなりご挨拶なもんだ。 人の往来が忙しい。ここでドライバーを残して、ガイドの Yuda と横田氏と私は車を降り、旧市街を歩いてまわることになる。

12:32 ヤッフォ門 (Jaffa Gate)。門を入るといきなり直角に曲がっており、これは門から攻め込まれたときに、直線コースだと一度に大量の兵が侵入してしまうため、時間稼ぎをするためにわざわざ通りにくくなっているのだという。たまに正統派の男性が歩いたりしており、にわかに宗教色の強いところにきたなあという雰囲気がする。


   

12:40 NAFOURA RESTAURANT で食事。事前に料理はなにがいいか聞かれアルメニアン・フードがいいと答えたが、かなりお勧めな店だった。まず最初に出てくるのは、名前は忘れたがナンみたいなパン生地を一口サイズにちぎり、色々な野菜や中央のピーナッツバターにつけて食うというものだった。ピーナッツバターもどきには、さらにオリーブオイルをかけたりしてうまさ満点なのである。さらにメニューの中のお勧めということで、シシカバブや SHISHILIK がお勧めということで、それを頼む。
しかし、なにがお勧めってあんた、それはお店の雰囲気でしょう。静かな昼下がり。鳥がたまに鳴いている以外、なにも聞こえない。街の喧騒とも無縁である。ここにいると、爆弾テロやガザ地区での紛争など、マスコミが作り上げたイスラエルの危険なイメージはウソだとさえ思えてくる。すっかり満足した私たちは、満足料として tax のほかに 20 NIS ほどウェイターに tipping して店を出る。

13:05 土産物街に入っていく。日本でたとえるなら、イスラエル版金毘羅参り (香川県琴平) である。石段の両側に土産物がずらっと並び、客引きをしている。ああそういえばヘンなグッズをみかけた。
その1。写真左、タイヤがブレーキになっている。なぬよくわからん? つまり荷物を運ぶためのカートなのだが、ほっとくと石段転がり落ちてしまうので、ヒモでタイヤをいつもひきずっていて、こいつを足で踏んづけることでスピードを落とすという、生活の知恵である。
その2。写真右、これはすごい。ドラえもんもぶっとぶ夏でも涼しいキャップである。帽子の頭頂部に太陽電池、そして「つば」の部分には扇風機が!! そしてこちらが使用イメージ! モデルは Yuda 。このおじさん面白い人で「太陽はどこだ」と言いながらふらふらと前後に歩き、日光の下に来た瞬間ファンがうぃぃぃん、である。というか、暑いんなら脱げ。というツッコミは日本の関西でしかきっと通用しないので自主規制させていただく。

Tシャツがほしいと Yuda に前もって話してあったので、Tシャツ屋の前でお買い物タイム。今回の私の土産選びのポイントは「ヘブライ語で何か書いてあること」であった。基本的にここの店は普通のシャツは 20 NIS らしい。とりあえず該当するイスラエル軍の Tシャツ 20 NIS と、細工の凝ったエルサレムと書いてあるシャツ 40 NIS に目をつけ、40 NIS はそりゃないだろうというので、「おっちゃんまけてー」。で、10 NIS まけさせ計 50 NIS でお買上げ。

13:13 さて、いよい よゴルゴダの丘にある聖墳墓教会 (Church of Holy Sepulcher) に到着。この教会が今回のエルサレム の旅でもっとも重要なポイントらしい。
写真は入口。拡大すると、はしごが 2F 部分にかかっているのが見える。教会はカトリック、アルメニア、などさまざまな宗派にとって聖地なので、ひとつの建物をシェアしている。だが、どんなに建物のほかの部分を改修するのにじゃまになっても、このはしごだけは触れたり動かしたりしてはいけないのだという。はしごについての説明はここ (英文) にもある。

13:16 中は基本的に薄暗く、入れば入るほど暗くなっていく。入ってすぐにところに、キリストに油を塗った大理石の塗油台とそのときの様子を描いた壁画がある。台といっても冷たい石の床である。

13:20 やがて大きいドーム状の空間に出る。教会の建物のなかに、さらに小さい建物がたっている。キリストの墓であるが、しかし何かを生み出す機械が設置されているようにも見える。Yuda の説明だと、ここにはアダム (アダムとイブのアダム) の頭蓋骨が埋められていた場所でもあるそうだ。小さい建物の入口はかなり低くなっており、大人が身をかがめてやっと入れる高さだ。中は 2つの部屋に仕切られており、それぞれ大人 2人が入れば限界である。最初の部屋にはろうそくが 4本立っていて、たまたま私がいたときに司祭がやってきて何やら祈りをささげて去っていった。

2つめの部屋に入ると、小さな祭壇とろうを塗ったような台があり、先に入っていた信者がそこに接吻をしたまま、じっと動かなかった。Yuda は台をなでながら、ここに、キリストが安置されていたのだと言った。

つられて私もなでてみた。死の床には、しみがいくつか付着しており、顔のように見える。雰囲気につられて心霊写真めいたものを想像しすぎじゃねえのかなあと思い直してみたが、この空間が、神社仏閣と同じ時間がとまったような荘厳な感覚に満ちていたのは確かだし、右手でさわってみたときの、床が油でコーティングしたようになめらかで、でこぼこした手触りは、よく覚えている。

13:30 ふたたびドーム状の空間にもどってきて振り返ると、礼拝堂が見通しになっている。その途中に宇宙の中心 (Center of Universe) と呼ばれるものがある。 形は食卓のコショウすり器みたいだが、当時はこの十字カーソルの中央がすべての中心、座標ゼロの原点だと考えられていたんである。
ちょっと動かしちゃえ。

余談だが現在でも宇宙の、とは言わないが地上の測量の基準となる原点はある。詳しくはこちら

13:33 礼拝堂は、アルメニア、カトリックなど 3つの祭壇が並んでいる。時々、それぞれの宗派の司祭が何やらヒモ細工のようなものを振りながら、上から見ると正方形の形に規則ただしく 90度ずつ曲がりながら祭壇の前を歩いている。なんどもぐるぐる回っているので、2回まわるのがしきたりなのかと Yuda に聞いたら、面白いカメラを構えているからアピールしているんだろうと言われてしまった。

中央祭壇の正面は、人がさえぎってはいけないらしく、正面からカメラを構えようとすると怒られてしまった。というわけで、左の写真は斜めから捉えた絵になっているが、祭壇の下に信者がもぐりこんで何やら祈りを捧げている。足が少し見えるのがお分かりだろうか。
アルメニア派は天井からランプが沢山さがっているのが特徴らしい。


13:45 聖墳墓教会を出て、土産物を一通りみた後、日本のアーケード街を狭くかつ由緒ただしくしたようなところに出る。
最初に通ったのがよりによって肉屋通りで、店頭で原型のとてもわかりやすい肉の加工が行われている。そう、あまり心臓の弱い肩やお食事中の皆さんは見てはいけない場面が展開する。見たい? クリックしてもいいですけど、クレームは一切禁止。[硬い系] [軟らかい系]
ちなみに私はここで、ノートPC がカメラであることに気がついた人たちに、これ何? これ何? と物珍しさでまた囲まれてしまい、この隙に何かスられてはかなわないと、「時間がないのでまたね〜」と去った。

気持ちわるいエリア通過。もう大丈夫ですよ。

[つづき]