守秘義務があるはずの裁判員が、顔出し報道されることに驚いた

2008年末に裁判員候補者通知の送付が約 29万5千人に行われ、NHK「日本の、これから」で模擬裁判と議論が行われてから 8ヶ月弱。ようやく裁判員制度による裁判 2例が行われました。裁判の直後に、報道陣が待ち構えていて裁判員の記者会見が行われる、というのもちょっと異様でした。

裁判員の記者会見は個人情報の公開ではないのか

昨年、裁判員制度に興味をもったときに、

裁判員等でいる間,裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけない

ことは読んだ覚えがあるので、あれっ裁判員が記者会見なんかしてよかったのか? と思ってしまったのは事実。裁判員法を見ると、

(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)
第百一条  何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

本人が同意していれば良いのか。

裁判員本人の意志はフェアな形で確認されたのか

FNN の動画を見ると、氏名なし、職業年齢あり、そして顔出し音声ありですね。動画に出ているのは 6人の裁判員のうち 3人。音声のみで取材に応じている人もいるので、セキュリティレベルは分けられていることになりますが…。

マスコミによって、顔にモザイクがかかっていたとか、いないとかが話題になっていますが、裁判員のプライバシーを保護しようとする努力を悪くいう必要はないわけで。問題はそこよりも、裁判員本人の肖像や肉声が報道されることのデメリットを冷静に判断してもらった上で、取材前に本人の了解をきちんと取ったのかやや心配ですね。

本人の才能と努力ではなく、完全なくじ引きで人を裁く機会を手に入れ、人生でもめったに経験できない、情報量の多い濃密な裁判過程を終えてほっとしているところに、報道陣にちやほやされる。そりゃ私も含めて普通は YES と言ってしまうものでしょうが、顔も立派な「個人を特定するに足りる情報」ですし、裁かれた被告人との将来的な接触の危険性も高まります。

裁判員であることを公にしてはいけないのは、いつまで?

さらに、裁判員制度 Q&A には

裁判員等でいる間,裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけません

ことになっているはずなんだけど、報道に応じることで、自分が裁判員だと公にしていることとイコールじゃないの? という疑問もあります。では「裁判員等でいる間」っていつまでなのかを探してみると、

(裁判員等の任務の終了)
第四十八条  裁判員及び補充裁判員の任務は、次のいずれかに該当するときに終了する。
一  終局裁判を告知したとき。
二  第三条第一項又は第五条ただし書の決定により、第二条第一項の合議体が取り扱っている事件のすべてを一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うこととなったとき。

裁判員制度はつねに刑事裁判。その刑事裁判で判決が下れば終局裁判で、裁判員の任務は晴れて終了、裁判員だった人の「本人の意志を確認」、記者会見へ GO。というところでしょうか。

どうも、日本新聞協会は事前に最高裁の了解を取りつけていたみたいですね。日本新聞協会のサイトには、裁判員に対するご協力お願いします的なメッセージがさりげなく載っていたりします。司法側も開かれた裁判のイメージ作りをする必要があるでしょうから、ぎりぎり譲歩したというところでしょうか。

合法だけれど、裁判員のプライバシーぎりぎりの線を突いた記者会見という印象を受けます。

ヘンな例えですが、タバコが「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。」云々と警告表示がされるように、裁判員から取材の了解を取るとき、リスクを提示することを義務づけるなど、一定のルールがほしいですね。

つづく。

1件のコメント

  1. 隣の住人

    私も顔出しコメント会見を見て、びっくりしましたよ。
    ニコニコしてる人までいて更に驚き。
    なんか、芸能人のコメントと勘違いしてんじゃないのかな。
    裁判員制度の意義っていったいなんでしょうね?

    そもそもアメリカの陪審員制度どは、似て非なるものなんでしょう?

    年金制度の401kだってアメリカのとは似て非なるもの。
    いろんなモノをアメリカから持ち込んでは、日本流に操作して実行し国民を混乱させる官僚制度。
    これ、どうにかしないとそのうち日本て滅すするんじゃないかしらね。
    こんな国に生きてて幸せ、なんて、とても思えませんから。

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