銀座眼科でレーシック手術を受けた方が、なんと 67人も感染性角膜症にかかっていたという事件が報道されています。病院の管理がずさんと言われていますが、これは 1医療機関だけの問題ではすまない気がしています。

10% 強が感染した原因は

銀座眼科でレーザー光線を使って近視を矯正するレーシック手術を受けた患者 639人のうち、67人ですから、10% 強が感染してしまったことになりますね。いろいろ報道されていますが、レーシックの種類がごっちゃにして報道されている感じもします。

レーシックは以前まとめましたが、「かんな」でフラップを作り「エキシマレーザー」を当てるマイクロケラトームレーシックと、「イントラレース レーザー」で作り「エキシマレーザー」を当てるイントラレーシックなどがあります。そして、フラップを「しわ」を作らずきれいに閉じる部分は、眼科医の手作業です。

見た目にわかりやすいので、マイクロケラトームの滅菌不足としている記事もあるようですが、昔ならともかく、かなりの人が薄くフラップを作れて、医師の技術による差が少ないイントラレーシックを選んでいるはずですから、それだけが原因ではないかな、と思っていたら、今朝の朝日新聞では滅菌装置オートクレーブのサーモスタットに不備があり、滅菌に必要な温度に達していなかった、とのこと。ということは、どのレーシックでも共通に使用するはずの開眼器などもクリーンな状態ではない可能性がありますね。

価格競争が進めば他院も人ごとではなくなる

もちろんクリーンルームを用意し、十分にメンテナンスしている医療機関がほとんどだと思いますが、単純に 1医療機関の問題ですまされないと思っています。というのも、レーシックはすでに過当競争に陥っているからです。

東京新聞によれば、

日本眼科学会に所属する男性医師は「あまりにも安い」と疑問視する。通常は両眼で三十万円ほどかかるという。

まぁ昔の相場だと 30万円で、今の適正価格はもう少し安いと思いますが。

マイクロケラトームレーシックは設備投資が少なくて済むため、銀座医院の 9.5万円にきわめて近い 9.8万円で実施している神奈川クリニックの例もあります。

イントラレーシックは、イントラレース FS60 のような設備投資が余分にかかるため、去年の比較ですが 14.8~28万円といったところです。どこで受けても Wavelight, Visx, ボシュロム社と、ハードウェアはおそらく寡占状態で高額で買ったものを減価償却しなくてはならない、でも手術は値下げ競争となると、術後検診の回数を減らしたり、人件費を削ったりして最後には本来削ってはいけないクリーンルームの質や衛生管理にまで…と銀座眼科と同じような状態にならないとも限りません。

レーシックが安全に受けられる仕組みづくりを

文科省による平成 20年度の学校保険統計調査では、中学生の 22.4% 、高校生の 28.4% が視力 0.3 以下、という最悪の結果だったそうです。1.0 以下、ではなく 0.3 を切っているという人口がこれだけ多いことに驚かされます。

半分は環境適応による結果ですし、もっとも眼にとって安全な「パッチあて」方法はレーシックでもコンタクトレンズでもなく眼鏡をかけること、だったりしますが、やはりレーシックが成功すれば、見た目にも本人の内面的も変化が大きいわけですし、技術が枯れるにつれて、手術を受ける人の数は増えていくと思います。

安全に視力回復手術が受けられるように、施術できるのはたとえば日本眼科学会の認定眼科専門医だけに制限するなり、逆に規制ばかり増やすのではなく、衛生管理について高い基準を満たした医療機関に、やって当たり前でなく、何らかのインセンティブ制度を設けるなり、といった対策があってしかるべき時期に来ていると思います。